”ととのう”を科学する

”ととのう”とは

一般的には、deep relax、多幸感などと表現され、サウナ→水風呂→外気浴の後に訪れる、感覚が研ぎ澄まされながらも全身がリラックスして、多幸感を味わっている瞬間を言います。

ととのう状態は科学的に定義・証明されているわけではないですが、体感と、様々な研究結果から推察される医学的な状態を表現すると、

「ストレスホルモン(アドレナリン、ノルアドレナリン)が分泌されているのに、副交感神経が優位な状態」と言われています。(サウナ学会加藤先生のお言葉を一部借用)

アドレナリンは、ストレスに応答して分泌されるホルモンで、交換神経系を刺激し生体の興奮状態を作り出すホルモンです。(生命における“臨戦態勢”を作るイメージ) つまり、運動器官への血流が増大して、酸素をより取り込み易くし、全身の感覚が研ぎ澄まされ、痛覚は麻痺するような方向に作用します。

ノルアドレナリンは全身に及ぼす作用としてはアドレナリンとほとんど同じですが、脳に対する効果は少し異なります。ノルアドレナリンは、脳に作用して、感覚を研ぎ澄ます、視覚的作業向上(集中力)、長期記憶の固定の役割があると言われています。

一方副交感神経が優位な状態とは上記の逆でリラックスした状態を指します。(生命における“休息態勢”を作るイメージ)

この相反する状態が共存する瞬間、つまり「リラックスしているのに、全身の感覚は研ぎ澄まされ、集中して冴えている状態」こそ、ととのっている瞬間と考えられます。

一般的にアドレナリンの半減期は2分と言われており、水風呂から出た瞬間からすぐに減少します。フィンランドの医学生を対象とした研究では、アドレナリンはサウナ内ですぐに上昇、水風呂の5分間(長すぎる?)で正常化、ノルアドレナリンはサウナ室内ですぐに上昇、水風呂や休憩中も高い値を維持したという研究結果があります。(Hussi, E., et al. “Plasma catecholamines in Finnish sauna.” Annals of clinical research 9.5 (1977): 301-304.)

これらの結果を総合的に判断すると、

水風呂後の外気浴中に起こる変化としては、2段階あって、最初の2分ぐらいはアドレナリン、以降はノルアドレナリンの効果によるところが大きいのかも知れません。

筆者の感覚としては、水風呂から出た直後は毛の一本一本の感覚が研ぎ澄まされている感覚で、徐々に多幸感とともに、脳が冴えわたっていく感覚を味わいます。前者がアドレナリン、後者がノルアドレナリンの作用を反映しているのかもしれません。皆さんの体験と照らし合わせてみてください。