サウナ文化の発展とともに、サウナーの「水風呂の温度」へのこだわりは年々高まっています。どれほど優れたサウナを造っても、水風呂の温度が20℃前後では満足されにくい――。今や、水風呂の水質や温度を含めた総合的なサウナ体験の完成度が施設の人気を左右する時代となりました。このいった背景を受けて、一般家庭や小規模施設でもチラー導入を検討する動きが急速に広がっています。
madsaunistでは、結成当初からWim Hof Method(WHM)とサウナの親和性に着目し、冷水浴・アイスバスをより手軽に体験できる環境が、今後のウェルネス文化の発展に不可欠だと考えてきました。そうした未来を見据え、私たちは3年前から世界のチラーマーケットを継続的に調査してきましたが、“体験に耐えうる性能”を備えた製品は存在せず、需要だけが先行している状態でした。そこで、安定した低温性能と安全性を両立する高性能チラーの開発を自らの使命とし、設計思想から検証まで一貫して取り組むことを決断しました。
中国は世界最大のチラー生産国ですが、アリババなどのB2Bサイトでは、低品質製品が多数出回っています。それを代理店契約で輸入した結果、日本でも“似て非なるチラー”が流通し始めています。弊社が取り扱うチラーは、中国本土のオリジナルメーカーによる特許技術搭載モデルであり、冷却能力・安全設計・OTA対応・国際規格準拠の全てにおいてこだわった商品で日本国内での意匠権を取得しています。
一見、どのチラーも似たように見えますが、その内部構造・設計思想・冷媒・制御技術には、体感に直結する大きな差があります。
本記事では、チラーの選び方を技術的・環境的・市場的観点から紐解き、なぜ私たちが現在のチラー設計に辿り着いたのかを解説します。
1. 冷却能力の「数値」を超えた、本当の性能とは
カタログ上の「2℃まで冷やせる」という表記だけでは、チラーの実力は判断できません。同じ1馬力(1HP)でも、冷却性能には大きな差が生まれます。
一般的にはチラーは○馬力というような表記でその冷却性能を分類し比較していますが、この馬力が示すのはコンプレッサーの出力であり、実際の冷却能力を決定するのはコンプレッサーの出力だけではなく、 冷媒の種類・熱交換器の設計効率・流量制御・制御ロジック・放熱構造といった複合要素です。
例えば弊社のSUPER ICE CHILLERの「氷を作れるほどの能力を持つチラーを2℃で運用する」場合、余裕を持った冷却サイクルで温度を安定維持でき、 長時間運転でもストレスなく冷却が継続します。 逆に「ギリギリ2℃まで下げられる仕様」のチラーは、外気温や連続稼働で性能が失速しやすく、寿命も短くなりがちです。
2℃に“できる”チラーと、2℃を“維持できる”チラーは違う。 体験としての冷たさはこの差で決まります。これは水温を何度に設定することになっても同じことです。
2. 電源仕様と安全設計──「動く」ではなく「安全に動く」
日本の一般家庭や小規模施設では、100V電源が主流です。しかし、1.5馬力や2馬力クラスのチラーを100Vで動かそうとする機種も存在します。こうした機器は18A以上の電流を要求することがあり、 一般回路(15A/1500W上限)では過電流・配線発熱・ブレーカー遮断のリスクが生じます。弊社のチラーは、100Vでは1馬力までに限定し、それ以上の容量が必要な場合は200V専用機(2HP)を採用しています。これにより、工事不要で導入できる範囲と、安全な運用範囲を明確に線引きしています。
電圧降下という見えない敵
一方でどんなによいチラーだとしても延長コードや同一回路の多機器併用により、実際の電圧が90V台まで下がることがあります。この電圧降下こそ、チラーが起動しない・冷えない原因の多くです。起動時には突入電流が2〜3倍になるため、安定した専用回路を確保することが理想的です。「どこでも差せば動く」ではなく、「正しい電源で本来の性能を発揮する」。 わけです。どのような運用を行うかは非常に重要なのにも関わらず、その点をあまり意識せずにモノだけを販売するような業者も散見されています。弊社ではすべてのお問合せいただいたお客様に対して、設置場所~電源の要件などを丁寧にヒアリングし、最適なアドバイスを行っております。
3. エネルギー効率と運用コスト──“体感効率”という新しい指標
チラーの性能を評価する際、カタログ上の指標であるCOP(成績係数)や定格出力(kW)は重要な要素です。しかし、実際の運用においては「どの環境で」「どれだけ安定して」「どの速度で冷却できるか」が、実効的な性能を決定します。弊社のチラーでは、300 Lの水を20 → 0 ℃まで約3.7 時間(1 HP・100 V)で、同条件下では2 HP(200 V)モデルが約2.0 時間で到達します。この結果は、熱交換効率・冷媒流量・制御ロジックの最適化によるものであり、単なる数値上の能力ではなく、現場条件下での再現性に重点を置いた設計です。
冷却曲線(温度‐時間カーブ)の安定性こそが、「装置が実際にどれだけ効率的に動いているか」を判断する最も正確な指標です。 弊社ではこの冷却カーブの解析を通じて、 COPの理論値と実測値の乖離を最小化する制御設計に取り組んでいます。
4. 水質衛生と殺菌技術──公衆浴場法を理解した上での国際基準設計
冷たい水が清潔であるとは限りません。 低温環境下でも細菌やバイオフィルムは増殖し、冷却装置内部の衛生設計が不十分な場合、汚染や臭気の原因となります。日本の公衆浴場法では、オゾン殺菌はあくまで「補助的手段」とされており、 塩素殺菌の代替技術としては認められていません。しかし実際の運用は自治体や施設によって解釈が分かれ、現場レベルで統一した基準を満たすことは容易ではありません。このような国内規制の特性を理解したうえで、弊社ではチラーを国際的な衛生基準(CE/ROHS/FCC)に準拠する形で設計しています。
内部には、
- 三重フィルター構造(粗・微・高密度)による物理的濾過
- オゾン殺菌ユニットを統合した循環ライン構造
を採用し、水質の透明度と衛生性を長期間維持します。
オゾンは世界的に高い酸化力による補助殺菌技術として認められており、 EUをはじめとする国際市場では、塩素系薬剤の使用量削減にも寄与しています。弊社のチラーは、こうした国際的な安全・衛生基準に基づいた水処理設計を採用しており、科学的根拠に基づいた衛生レベルを確保しています。
5. 操作性とスマート制御──遠隔運用がもたらす新しい利便性
弊社のチラーは、スマートデバイスとの連携により遠隔制御と稼働監視が可能です。これにより、ユーザーは現場にいなくても装置の状態を把握し、必要な操作を実行できます。
①遠隔操作による高い利便性
チラーを「いつでも、どこでも」起動・停止できることで、施設の営業時間やサウナ利用時間に合わせた事前冷却の自動化が可能になります。これにより、現場スタッフの負担を減らしながら、利用者が入室する時点で理想的な水温を実現できます。単なる冷却装置にとどまらず、運営効率を支えるシステムとしての性能を備えています。
② スケジュール運転による運営最適化
小規模施設や宿泊施設など、運営リソースが限られる現場において、スケジュール機能は大きな利点となります。稼働時間や曜日ごとの自動制御が可能で、無駄な電力消費や稼働時間を抑えながら安定した水温管理を実現します。
③ 遠隔監視とログ解析によるトラブル対応
万が一、機械トラブルや温度異常が発生した場合でも、装置が出力する運転ログ・温度履歴・電流値データを遠隔から取得し、稼働状態を解析することが可能です。これにより、現場に赴くことなく初期診断を行い、不具合の特定や改善指示を迅速に実施できます。実際に、遠隔ログ解析により初期不良を検出し、交換対応を行った事例もあります。
④ソフトウェア更新による機能拡張
チラーの制御システムは、OTA(Over the Air)アップデートに対応しています。これにより、遠隔からソフトウェアの更新を行い、例えば「アイスモード(氷点運転)」など、ハードウェアが持つ潜在能力を後から開放・拡張することが可能です。 導入後も継続的に進化する設計により、ハードスペックを最大限に引き出す柔軟性を実現しています。
6. 設置環境と外気条件──環境に合わせて性能を最大化する設計とサポート体制
チラーの性能は、設置環境に大きく影響を受けます。冷媒の凝縮効率や放熱条件は外気温や通風状況によって変化し、わずかな違いが冷却速度や安定性に直結します。
①環境条件が与える影響
- 外気温:外気温が高いほど凝縮圧が上昇し、冷却効率は低下します。真夏や密閉空間では能力が10〜20%程度低下することもあります。
- 浴槽材質:FRPや木製浴槽は断熱性が高く、放熱を抑えられる一方、金属槽やコンクリート槽は外部熱伝導が大きく、水温が変化しやすくなります。
- 通風と湿度:通風が悪いと放熱フィンに熱がこもり、性能が安定しません。湿度が高い場合も、蒸発冷却効率が低下する要因となります。
こうした条件は、チラーの仕様値には現れない実運用上の要素であり、同じ機種でも環境次第で体感性能に差が出る最大の理由です。
②幅広い環境に対応する設計
弊社のチラーは、これらの要因を考慮した上で広範な外気温帯(約5〜40℃)に対応できるよう設計されています。屋外設置を前提とした防水性能(IPX5相当)を備え、水風呂のすぐそばや屋外サウナスペースでも安心して使用可能です。一方で、防塵仕様ではないため、粉塵や砂埃の多い環境ではカバーの併用を推奨しています。
③導入前の環境ヒアリングと個別アドバイス
チラーの最適運用は、設置環境の正確な理解から始まります。弊社では、導入をご検討中のすべてのお客様に対してオンラインでの事前ミーティングを実施し、以下の点について設置予定場所の通風・日射条件や浴槽の材質・容量・断熱構造、想定される稼働頻度・使用時間帯などを丁寧にヒアリングを行います。
これらの情報をもとに、最適な機種選定と設置方法をご提案します。また、設置後も運用状況に応じた調整アドバイスを行なっています。
7. 中国チラーマーケットと冷媒技術──模倣品の時代を超えて
中国は世界最大のチラー生産国であり、現在も世界中のOEM供給を担う主要拠点です。しかし、市場には正規メーカーの製品と、それを模倣した低品質製品が混在しています。
アリババなどのB2Bプラットフォーム上では、外観やスペックを模した製品が多数流通しており、日本市場でもそれらが正規品と誤認されたまま輸入・販売されるケースが増えています。
このような市場構造の中で、弊社が扱うチラーは中国本土の正規メーカーによる特許技術搭載モデルです。 特に冷媒循環構造・制御基板・コンプレッサー周辺の設計に独自性があり、冷却性能・安全設計・OTA対応・国際規格準拠のいずれにおいても模倣品とは一線を画しています。
冷媒技術:R32という選択
冷媒はチラーの「血液」です。弊社のチラーは、R32冷媒を採用しています。
| 冷媒 | GWP値(地球温暖化係数) | 特徴 |
|---|---|---|
| R410A | 約2088 | 旧主流。安定性は高いが環境負荷が大きい。 |
| R32 | 約675 | 高効率・低環境負荷・単一成分で制御が正確。 |
R32はR410Aに比べて熱伝達効率が約10〜15%高く、同じ能力をより少ない電力で達成可能です。GWP(地球温暖化係数)が低く、国際的な脱フロン化の流れにも合致しています。ただしR32は可燃性を持つため、電装設計・冷媒経路設計の安全性が問われます。弊社はここに最も力を入れ、安全設計と高効率を両立させています。冷媒は、未来へのスタンスを表す。弊社はR32を選ぶことで、性能と環境責任の両立を実現しています。
8. 技術革新と並走する仕様改良——製品の寿命を更新し続ける設計思想
冷却技術の進化速度は極めて速く、数年単位で制御基板・冷媒・部品規格が更新されます。弊社では販売開始以降、複数回のバージョンアップを実施してきました。
対象は制御アルゴリズム、冷媒ライン構造、電装部品、センサー精度、筐体防水構造など多岐にわたります。
これらの変更は単なる改良ではなく、実測データと市場運用結果に基づく設計最適化プロセスとして位置づけています。製造現場での部品調達・工程見直し・梱包・輸送方法に至るまで、品質安定性を検証しながら更新を継続しています。
改良の目的は、単なる「最新化」ではなく、再現性・信頼性・保守性の向上にあります。madsaunistのSUPER ICE CHILLERは「冷却装置」としてではなく、「体験の物理的基盤」として進化を続けています。
弊社SUPER ICE CHILLER の詳細については特設ページをご覧ください。https://madsaunist.com/chiller

