スチームジェネレーター

madsaunistがリリースしているストーンタワーガードを使うと、手前の部分に空きスペースができる。当初からその空きスペースの活用法として、水をいれたステンレスバットを設置してオートロウリュを楽しんでいた。煮出したサウナハーブの香りとマイルドに立ち上がる蒸気は気持ち良かったのだが、もっと空間全体に行き渡るような湿度を発生させたいとも感じていた。

 より蒸気を勢いよく噴出させ、微細な水蒸気を発生させることができれば水蒸気に乱反射した輻射熱が空間全体に散っていき、より快適なサウナになるはずと考え、試験的に『スチームジェネレーターβ版』の開発を開始した。

 madsaunistはサウナ室内の気流をデザインすれば、機能という観点ではアウフグースは不要と考えている。気流をデザインするために、強制的な空気の流れを生みたかったので蒸気が勢いよく噴出するシステムを作りたかった。蒸気生成室と温水タンクのバランスを取り、ちょうどよい蒸気がでるように調節することで持続的に微細な蒸気が噴出し、サウナ室内の気流をかき乱すことができる構造を構想した。2021年7月のことである。構想しながら問題点も検討していく中で、蒸気生成室に入れた水による煙突の冷却と、それによるドラフトの低下が考えられたため、安定的な蒸気を発生させるために高出力なサウナストーブへの導入を検討していたところ、Sotoburo STOVEのリリースがあり同製品向けのスチームジェネレーターの製作に取り掛かった。

 Sotoburo STOVEの角ばったデザインに合わせて、垂直方向の力に対して強度の高いハニカム構造のタンクをデザインした。このハニカム構造のタンクは、円形のタンクに比べて溶接線が増え非常に手間もかかるのだが、燕三条の職人たちのおかげで何とか形にすることができた。また、スチームジェネレーターの基部にはかなりの荷重がかかることが想定されたため、煙突接合部への負担を減らし、煙突接合部の歪みを防止する目的で接合部ガードも搭載されている。もちろんガードもタンクのデザインに合わせたハニカム構造となっていて、タンクに水をたくさん入れた状態でもしっかりと全体の荷重を支えてくれる。

※丁寧にタンクの溶接を行っている様子。

※水漏れがないか1つずつ検品

 Sotoburo cubeにスチームジェネレーターをインストールすると熱すぎると感じる方もいるだろう。僕らがその頂点の温度を目標にしたのは、決して熱すぎるサウナを作るためではない。熱ければドアを解き放つことで、テントの外からフレッシュエアが流れ込み、息苦しさとは無縁のテントサウナになる。熱々で潤々で新鮮な空気に満ちた蒸気浴こそがmadsaunistが目指すテントサウナ。ドアの開閉場所、開閉具合によって、満足のいく温度・湿度を保ちながら、どんな好みの温度にも設定できることこそ、各個人に合わせたオーダーメイドセッティングだと考えている。これまでのサウナは密閉空間で熱い熱源を囲いこむことによって成立してきたが、逆に熱い空気を適度に逃がし、空気の対流を生みながら、外から新鮮な空気を取り入れて、適温に持っていく全く新しいサウナ体験をイメージしている。

 スチームジェネレーターのタンク内で発生した水蒸気は噴出口に向かう間に煙突の熱で更に過熱され、噴出口から出る頃には過熱水蒸気に近い状態となる。(水蒸気は温度が高まるほど熱伝導率が上がることが知られており、水蒸気自体が輻射熱を発するようになる。)噴出孔から勢いよく噴出する蒸気でサウナ室内に気流を生み出し、永続的に生成される微細な蒸気がサウナ室内に拡散する。テント内に拡散した微細な水蒸気自体が輻射熱を発し、その輻射熱がサウナ室中に乱反射するサウナは、まさに全身を蒸される体験といえるであろう。より粒度の細かく、過熱された水蒸気が充満したmadsaunistのテントサウナは、空間の熱伝導が優れているため、短時間でもしっかりと身体に熱を伝えることができる。(一般的なサウナ入浴時間の半分以下の時間)蒸気の流れをデザインし蒸気を浴びることを楽しむサウナ、madsaunistが提案する“天幕蒸気浴”をぜひお楽しみください。

※今後同製品を様々なストーブにインストールできるアタッチメントも開発を予定している。