公開実験実施報告書丨β001

 備忘録の意図を込め、公開実験(2021年10月29日(金)〜31日(日)@山梨・金の森山荘)の一切をここに書き記します。

 その前に、あらためて madsaunist というレーベルの活動趣旨をお伝え致します。

 madsaunist は、UKとYAS、そしてYsKという各サウナ関連チャンネルで特異思想を発信してきた3名で結成。レーベルテーマは、『自分達がイケてると感じるサウナ|バーニャ文脈のアプローチを『構想』+『創出』+『共有』すること』また、イベントにおいては『コンセプチュアルな思想とサウナを掛け合わせ、没入できる空間デザインや魅惑的な心的動線を多種多様な現代アーティストと可視化実験を行うこと』と明言しています。

 つまり昨今、サウナイベントは数多行われておりますが、madsaunist の看板を掲げているからには、私達は所謂一般的なサウナ・バーニャテントを川や湖、海等の水場の近く、または屋上や空きスペースにて展開するだけのスタイルは否なアプローチなのです。仮に一般的なそれを『イベント』と呼ぶのであれば、私達の思想を反映させたイベントは特異で変態的である。別の呼称で形容しなればならない。レーベル名に”mad”が入っていることもふまえ、結果『公開実験』という表現に落ち着きました。

 また私達は、アウトドアサウナを最適化しうるギア / プロダクトとして、ストーンタワーガードやバイオフレアなどをリリースして参りました。しかしながら、madsaunist として未だ実現していない領域(=リアルイベント)に足を踏み入れたいという話になり、YsKが提案する『金の森山荘』というアウトドアスペースを現調しました。

madsaunist 金の森実験場 場長
金森 正浩(Masahiro Kanamori)

 金の森山荘に赴き、出迎えてくださったのが、何を隠そう『madsaunist 金の森実験場 場長 金森 正浩氏』だったのです。金森さんは、ご自身で金の森山荘を改築・増築を繰り返し、チェーンソーやショベルカーの扱いはお手の物。私達のメインツールであるEx-Proも、某S社が販売代理する前に直輸入したタイミングで共に購入したというツワモノです。DIY領域においても膨大な知見があり、思想とアプローチがほぼマッドサウニストだったのです。一目惚れとはこのことなのでしょう。会話のひとつひとつに興奮・共感し、今回の公開実験におけるゾーニング計画もこの時に決定したほどです。本公開実験は、金森さん無しでは成立しなかったでしょう。出逢いとは恐ろしくも、奇跡的なタイミングで舞い降りてくるものですね。

 さて、皆さんも周知の通り(?)、本公開実験は事前告知を行わず、ドネーション形式、且つプライベートメッセージを用いた完全招待制という手段を講じました。人数は各回二桁前半など、少人数だからこそおひとりずつ深いお話をすることができましたし、私達のコンセプトや未来構想をシェアすることができました。そして、非強制参加型のコンテンツを散りばめ、『わかりにくさ』と『わかりやすさ』の境を曖昧にし、ナチュラルな没入感を創出したつもりです。

 お越しくださった方々に公開実験についての感想をお聞きするたび、様々なことに気付かされました。特に、皆様の思いを受けYsKが放った言葉が一番の収穫かもしれません。今現在、多様なサウナテントがバンバンリリースされているなか、「アウトドアサウナを取り巻く環境は、いずれ『どこの・だれのセッティング・環境だから行きたい!』って。」「そういう時代になるんじゃないか」って。

 私達は、比較的『人(ヒト)』や『自然の理(ことわり)』に重く意識を置いています。関わる全てを自分事より他人事にしたい。サウナ・バーニャテントも皆様が体感したことを人に話したくなったり、自分だけのものにしたり。そのような心的拡張性のトリガーになる物事を散りばめまくりたいと。五感を通して、第六感の、それぞれの何かを見出していただきたいと常に思っています。

 そして、本公開実験に対し、私達のエゴ=コダワリを最大限に放り込みました。

 そんなコダワリ抜いた仕掛けを以下に記します。ご笑覧いただけると幸いです。

名称

 今回の公開実験名称は、上記の通り『公開実験』の英単語を当て『open experiment』に。第一回目の公開実験のため、『β(ベータ)』を頭に置き、ナンバリングを行いました。また、実験テーマを『experimental esthetics(エクスペリメンタル・エスセティックス)=実験的美学 』としました。これは、今後展開していきます公開実験シリーズの始まりとして、公言すべき皆さんとのお約束でもあります。ナンバーが増えるにあたり、世界観やテーマ、空間構成やストーリーに従い、この実験テーマは変えていきます。毎回どんなテーマになるのか、楽しみにしておいてくださいね。

テーマ

 公開実験場でもある金の森山荘は、周囲を木々や豊富な川に囲まれ、夜には満点の星空が観える素晴らしいベニューです。どうにかこの環境に手持ちのクリエイティブカードを当て、プリミティブでナチュラルな空間を造成できないか思案しました。

 まず脳裏に浮かんだのが『木火土金水』。いわゆる陰陽五行で重んじられている思想のひとつです。そもそも、サウナにはこの五行の要素が散りばめられていると思っています。

木・・・薪、ヴィヒタ、ラドル、バケット etc.
火・・・燃焼している薪、バイオフレア etc.
土・・・地面、サウナストーン etc.
金・・・サウナストーブ etc.
水・・・水風呂、川、湖、海、ロウリュ etc.

 こんなにも閉塞した空間の中で五行が成立しているのであれば、それを別の角度でアプローチし、拡張してやろうと。そう思ったわけです。それが以下各コンテンツの演出になります。 

竹あかり

 私達が敬愛する竹あかり演出家集団『CHIKAKEN』から池田 親生氏に演出協力をいただきました。

 光源はLEDなのですが、使用している色温度が1800~1900Kで、加工柄(穴)から漏れる光がどうにも心を穏やかにさせます。今回は、細流を挟み、乱反射する光をベースに外気浴の新たな側面を演出してみました。クールダウン後に併設した椅子に座り眺めると、目の前がぼやけ、万華鏡を覗いているような感覚に陥りました。いつか、より多くの竹あかりとガチコラボがしてみたいものです。サウナ×ファンタジーの究極形態、楽しみです。

池田 親生(CHIKAO IKEDA)丨竹あかり演出家

 1982年、福岡県生まれ。 2007年、三城 賢士とともに「竹あかり」の演出制作・プロデュース会社「CHIKAKEN(ちかけん)」を設立。 熊本を拠点に、東京・明治記念館や米国でのイベントなど、日本全国各地、世界までも活動の 場を広げて、年間100現場以上の竹あかり演出を行っている。
 
 熊本地震後、一般社団法人チーム熊本、一般社団法人BRIDGE KUMAMOTOを設立。被災した市民や県外支援者とともに、復興支援活動を行っている。

マンハッタントーチ

 できる限り人工的な光は抑制したいと、空間演出を思案している際に思いついたのがスウェーデントーチです。トーチに火を入れると、美しい炎のラインが十字に現れます。とはいえ「ただトーチを置くだけというのは違うなと。であれば大量に配置したらどうなのか。でも、それだと芸が無いよな。」と脳内の引き出しをあれでもないこれでもないとシナプスを活性化していた時に思いついたのが、一旦大量に設置されたトーチ群を脳内でシルエット化することでした。そして、段々と見えてきたのが、ビル群。それを『美しい』『夜景』『バックショット』『光』『乱立』というワードを掛け合わせた結果脳内に出現したのが『マンハッタンの夜景』でした。

 マンハッタンの夜景は世界でも有数の美しさで、ブルックリン橋やエンパイアステートビルなどのイルミネーションが輝き、車のヘッドライトやテールライトが川のように流れて行きます。そうした景色を”対岸から臨む、そんな光景をトーチ群で表現できないか?なんなら、インスタレーションという機能だけではなく、フォトスポットにもでき、暖をも取られるようにはできないか?”ということで、150mmピッチで各日9本を手配しようということになりました。

 しかしながら、制作期間が限られており、急ピッチでYsKと金森さんがトーチ施工を担当。トーチ施工日に1つの動画がmadsauistのグループLINEに展開されました。そこには、メスをチェーンソーに持ち替えた、本業外科医のYsKの姿が。なんと勇ましいことでしょう。その他のメンバーが、この動画を観てととのい掛けたのはここだけの話。最終日は、DAY1/DAY2で焼け残ったトーチを全て焚べフィナーレ。スウェー・・いやマンハッタントーチ、またどこかでやれたらいいな。 

ウィンドベル

 結論から申し上げます。コンテンツ的に実験失敗です。日本の風鈴やフランスのコシ・チャイム、バリのバンブー風鈴やメタル風鈴。ガラス、銅、アルミ、陶器、竹、木など様々な材質や形状の風鈴を30本、高低差を付け乱立させました。クリエイティブを担当したUKの脳内ではアナログ的立体音響になる・・・はずでした。

 下見を幾度も行い、過去10年の天気予報を調べ、風速結果の統計を参考にしていたのですが、風が吹かず音がならないという結果に見舞われました。とはいえ、撤収している時に風が舞い、数々のウィンドチャイムが鳴り、「これだ!」と携帯を取り出した瞬間に風が止み・・・。集音できなかったという・・・。なんだろう、この切なさは。皆さんにもお聴かせしたかった・・・。

CHILL OUT

 CHILL OUT の渡邉氏(以降、ナベさん)とはプライベートでも仲良く、どうでもよいことを拡張し談笑し合う仲。今回、ナベさんにひとつ提案をしてみました。『自主イベントをやるので共にオモロいことをしてみたい』『CHILL OUT とその他の既製品飲料を混ぜ合わせ、オロポに代わるサウナドリンクを発見してみないか』と。そこで実験条件として設定したのが以下の項目。

・オフィスワーカーが帰宅途中に買いやすいモノ
・例えばコンビニとかスーパーで買えるモノ
・単純に1品だけを混ぜ合わせること
・なんなら、計量とかせず1品まるごと混ぜ合わせても成立するモノ
・オロポぐらいわかりやすいパンチがある混合飲料であること

 当初、CHILL OUT とヨーグルトを混ぜ合わせてみたらどうなんだろうと、私達の友人でもあるヨーグルト研究家の阿部 花映氏に相談。理論上は合うはずだろうと。「もし掛け合わせたら『チルグルト』という名称とかキャッチーで良くない?」とか悪ノリが進行し、渋谷某所で『第1回 CHILL OUT 魔改造研究の集い(仮)』を開催することが決定しました。もちろん目的は、混ぜ合わせた際に不味くなる対象を除外するためです。無闇矢鱈にかき集め、公開実験に放り込むほど私達は馬鹿ではありません。ただ、その日の私達は CHILL OUT でオーバードーズになったのはここだけの話。もちろん良い意味でですよ!

 さて、選ばれたペアリング対象は以下の通りです。

実験対象(メニュー)

☆CHILL OUT(チルアウト)
+Fibe Mini(ファイブミニ)<大塚製薬>
+明治ブルガリアのむヨーグルトLB81プレーン <明治>
+明治プロビオヨーグルトR-1 <明治>
+カゴメ トマトジュース 食塩無添加 <KAGOME>
+ウイダーINゼリー エネルギー <森永製菓>
+大粒アロエin クラッシュタイプの蒟蒻畑 りんご味 <マンナンライフ>
+クラッシュタイプの蒟蒻畑 ライト ぶどう味 <マンナンライフ>
+PERFECZZT VITAMIN 1日分のビタミンゼリー マスカット味 <ハウス>

☆CHILL OUT ZERO GRAVITY(チルアウト ゼログラビティ)
+Fibe Mini(ファイブミニ)<大塚製薬>
+ビタミン野菜<伊藤園>

 ゼリー系は良い感じにデュルデュルしていて口内が楽しく、美味しかったですし、トマトジュースも健康な感じが前に出て良かったです。その中でも、YsKはヨーグルト、UKはファイブミニがお気に入りです。皆さんも是非お試しくださいね。

 もう1点特記すべきなのは、私達は、CHILL OUT は文化的路線を歩み、地球に寄り添った存在であるべきだと考えております。そこで、CHILL OUT ブースに使用した材料、実は全て廃材を使用しておりました。塗料もドイツメーカーで、環境に配慮したものを使用。本体は分解もできますので、別の場所でも使用することのできる、SDGsに沿ったサスティナブルな什器となりました。
 私達は草案を提示しただけなのですが、見事に形にしたのが TEAM 渡鳥ジョニー!彼らがいなければここまでのクオリティーは出せなかったでしょう。ありがとう、ジョニー!

香り

 私達が愛して止まない、サウナハーブをプロデュースしている『アルテミスの薬草店』。ラブサウナーことミサちゃんと、空間の香りの専門家であるカル・ダモンの山本先生、デザイン担当の山本メーコちゃんで結成されたユニットです。アルテミスの薬草店はロウリュ水に『煮出す』という動詞を反映させています。そう、お茶のようにナチュラルなエキスが抽出されるのです。

 彼女たちがプロデュースしているサウナハーブミックスの中でも、特に『ヒノキ×クスノキ』や『黒文字×青文字×陳皮』は特段良い香りで、煮出した後のエキスをロウリュした際に発生する蒸気自体も柔らかく、この上ない上質な空間を生み出します。

 今回は、アルテミスの薬草店と共にコラボ開発しているハーバルロウリュを公開実験に参加してくださった方々に体感していただきました。香りが特定できず、香ると皆様の中にある情景がふと浮かんでくる。詳細は未だ開発中のためお伝えできませんが、皆様のご期待の添えられると信じております。

セッティング

 説明するより見ていただいた方が早いかと。こちらをご覧ください。

UK settings

YsK settings

 いずれも同型のEx-Pro Iglooを使用しておりますが、UK、YsKそれぞれのコダワリを多いに反映しております。私達がそれぞれ最高だと思う温度と湿度にセッティングした空間の中で、madsaunist がリリースしているストーンタワーガードやリリース予定の最高級サウナストーン、熱源ガーディアンと言っても過言では無いバイオフレアを組み込み、断熱や輻射熱にもこだわった私達史上暫定一位の環境を公開実験参加者の皆様に体感していただきました。

 とはいえ、公開実験後の今現在、更に改良すべき/したいポイントがそれぞれ見えており、次回の公開実験では更に進化した環境をご体感いただけそうです。お楽しみに。

 

 そんなこんなで私達のオフィシャルフォトグラファー高橋 裕也が撮影した画像と共にお送りした長文もこれにて終了です。

 最後までご笑覧くださいました皆様、公開実験に協力してくださった皆様、そして、遠いところお越しくださった変態サウナーの皆様ありがとうございました。

 次回の公開実験に向け、植物を取り扱う職業・アーティストの皆様、ザワついておいてください。UKから連絡が入りますので。もちろん、気になる方はご連絡ください。大歓迎です。コラボレーションしましょう!


 では、また次回。皆様も良きサウナ、バーニャライフをお過ごしくださいね。

 

追伸:
サウナアンバサダーのタカヤマさんが客観的なレポートを書いてくださりました。是非こちらも併せてご覧いただけると幸いです🙏

 

madsaunist
UK・YAS・YsK

super thanks

Akira Watanabe(CHILL OUT
Chikao Ikeda(CHIKAKEN
Jin Watanabe(BANYA JAPANAdapty
Nozomu Takahashi(NUMBERZET
Se-ju Takayama
Wataru Yonezawa(APPCHEEZ
阿部 花映(ヨーグルト研究家)
高橋 裕也(フォトグラファー)
渡鳥ジョニー(什器製作)
坂下 航徳(什器製作)
早川 元音(齋庄インターナショナル
山本 亜紀子(アルテミスの薬草店丨カル・ダモン
ラブサウナー(アルテミスの薬草店)
滋賀バイオマス株式会社